鉄板ブタ

前回の続き。
さすがに日本では報道されなくなってきたが、「行方不明になってしまった日本人の親をさがすタイ人の子供」が数人、あらたに登場してマスコミに取り上げられている模様。


しかし、これはあらかじめ予想された事。


私の狭い生活圏内でも、日本人の父を持つ子供を数人みた。
例えば韓国人の子供の事例を私は知らない。
勿論、さがせばいるのだろうが、単純に数の問題なのだろう。
やはり日本人は、かの国にそれなりに大きな足跡を残しているのか。


◇◆◇
さて、収束に向かっているブタの話の続きも書き記しておかねばならない。
なんと言っても、私は豚肉に大いに感謝しなければならない立場にある。
おそらく少し前の私の身体の50パーセントくらいは、豚肉が資本だったのだから。


つまりこういうことだ。
そのころ私は粗食を旨としていた。
少し正確にいうと、めんどくさいので1日に1度しか食事をしなかった。


その1度の食事も、わざわざ市場までおかずを買いに行くのが面倒くさかった。
とりあえず米は買い置きしてあるので問題はない。
そこでおかずとして、日本のものよりだいぶんと太い、形としてはナスに近いようなキュウリをビニール袋にひと袋、10バーツ(約30円)で買い、2、3日もたせる。


―というような、ものぐさな食生活をしていたのだが、数日に1度は贅沢をしてみたくなる。
そこで、その街に2軒ならんで建っている焼き肉屋に行くことになる。


焼き肉と名前にはあるが、使う肉はブタとトリ。
名前を「ムーカタ」という。
「ムー」はブタ、「カタ」はフライパンのことで、直訳すれば「鉄板ブタ」ということか。
ちなみに「ムーカタガオリー」というのもあって、「ガオリー」とは「韓国」の意。
つまり「韓国風鉄板ブタ」ということで、これが私たちが想像する焼き肉なのだと思う。
「思う」というのは近所(私の住んでいた県内)には「ムーカタガオリー」の店がなくて、行ったことがなかったから。
今度訪タイする時、是非とも食べに行きたいと思う。


さてこの鉄板ブタ。
日本で考える焼き肉とは若干違う。
ブタを鉄板で焼くのは同じ。
だが、なぜか野菜はスープで煮る、つまりお鍋形式で食べる。

ムーカタ(鉄板ブタ)
端に見えるのが空芯菜


中央の突起部分で肉を焼き、周りのお堀部分にスープを入れて、野菜、春雨、ラーメンなどを煮る。
野菜は、白菜、空芯菜がメイン。
ブロッコリーをいれる店もある。


ブタ肉は赤身がメイン。
脂身のついた肉もあったが、どちらにしても歯ごたえのある肉。
つまり固い。
勿論、肝も食べる。
胃か腸のスライスもあって、私はこれが好きだった。


ブタだけでなく、鶏肉の胸肉も一緒に焼く。
胸肉をスライスしたもので、店によってはカレー粉で味付けをしていた。
固いブタよりも、トリの方が柔らかくて、私はこちらの方が好きだった。
ついでにスープ部分に、トリの手(正しくはなんと呼称するのだろう?)を入れて、柔らかくなった頃に食べる。
これも美味。


1人で食べるのが好きな私は、焼き肉屋に1人で行く。
開店と同時に。
1人だと、500ミリリットルのボトルをあけると飲みきれないので、注文せず、水も飲まずにひたすら食って帰ってくる。
飯代は1人89バーツ(300円弱)、さらに水を飲むと大体10バーツ、氷が5バーツくらい追加される。
前述のキュウリの値段を考えれば、私が水を注文する気にならないのも仕方がない筈なのだが、店の連中は「なんてケチな客だ」と思っていたに違いない。