「バイクの整備はちゃんとしてある。ブレーキパッドは交換した。」
と、知人は言った。
事前に日本から「いつものバイク、貸して下さいね」と電話で頼んでおいた。
さっきバスターミナルに迎えに来てくれた時も、彼はそのバイクに乗ってきていた。


ソニック125
後ろにくくりつけた不格好なケースが私の荷物



タイホンダ製、ソニック125。
現在都会に下宿している彼の娘の愛車。
彼女の趣味なのだろうか、派手な黄色。
アンダーボーンフレーム型、つまりスーパーカブのようなかたちをしている。
スリッパでもギアチェンジ出来るように、チェンジペダルもカブと同じ。
それでも一応「スポーツモデル」ということになっていて、円心クラッチではなくて普通のバイクと同じようなクラッチがついている。
タイでは一般的なかたちのバイクだが、私にはカマキリのように見える。


タイのバイク事情は簡単だ。
スーパーカブ型のバイクが圧倒的多数派。
ここ数年はスクーターが増えてきている。
アチェンジがめんどくさいという物理的理由より、ちょっと割高なスクーターが物欲を刺激するらしい。
きれいなおねえさんは、だいたい、ちょっと高めのスクーターの新車に乗っている。


数は少ないが、普通の形をしたバイク―アメリカンやレーサーレプリカも走っている。
時々、レーサーレプリカタイプのNSR150に太ったおばちゃんが乗っているのを目撃して、複雑な気分になる。
スリッパ履いて割烹着のおばちゃんが、レーサーで買い物・・・。


TIGERというタイのメーカーがある。
このメーカーのバイクは安いが少数派。
タイホンダ、タイヤマハ、タイスズキの方が多数派。
おそらく関税の関係で中国製のコピーモデルはタイでは見られない。
3月にラオスの首都ビエンチャンに行ったところ、相当量の中国製のコピーモデルが走っていた。


タイで作られるバイクは200CCのバイクが最大。
それ以上の大きなバイクは輸入されたもので、ごくごくまれに1000CCや400CCのバイク、あるいは250CCのオフロード車を見かけることもある。
乗ってるのはお金持ちか外人の観光客。レンタルバイクで借りたものなのだろう。


さてソニックだ。
前回3月、ラオスに行った時も、タイ・ラオス国境の町ノンカーイまではこのソニックで行った。
あの時も多分、1000キロ以上走ったので、車の様子は分かっている。
ガソリン1リットルで大体35キロくらい走る。
でもタンクが4リッターくらいしか入らないので、結局100キロちょっとでガス欠になる。
よって県境の山を越える時、時々、ガス欠になりそうで、どきどきすることになる。


知人はWAVE100というカブ型のバイクも持っている。
WAVE100では一度、バンコクまで片道700キロの道のりを乗っていった。
別の機会にはチェンマイから更に山奥にあるメーホンソンまで、これも片道600キロくらい乗った事がある。
どちらもゆっくり走った覚えはないが、ガソリン1リットルで40キロ以上は走った。


荷物も積みやすいし、本当はどちらかと言えばWAVE100の方がよい。
でもソニックを用意してくれたのだから「まぁ、ソニックでもいいか」と考えた。
ソニックソニックでとてもよいバイクで、明日の目的地、チェンマイまでの道のりの大半は山道なのだから、速いバイクの方がいい。


8月に滞在中のガソリン価格は、レギュラーが31バーツ。ハイオクが32バーツだった。
正確にはガソリンではなくてガスホール=エタノールを混ぜたガソリン。
亡命中のタクシンが積極的に導入し、タクシンが失脚した後の政権も優遇税制が続いているらしく、普通のガソリンより2割程度安い。
でも今年の3月はレギュラーガスホールが20バーツ程度だったような記憶もあるので、それに比べるとまた随分と高くなった。


8時過ぎ。
知人が出勤するという。
彼は少し山に入った学校の校長先生なのだ。
毎日、いすゞピックアップトラックで通勤している。
荷台に荷物を載せて貰い、丁度通り道にある、私が泊めて貰う予定の家まで運んで貰った。


「夕方、電話してこい。ご飯を食べよう」と校長先生は言った。


後日撮影したタイ・ミャンマー国境の町、メーサイにあるスーパマーケット「ロータス」の駐輪場。
前列、1台をのぞき、全てカブ型のバイク。